【書評】苦しかったときの話をしようか【親、子ともに必読】

こんにちは、めだかです!

今回は、卓越したマーケティング手法でUSJの経営を立て直したことで有名な、森岡毅さんの「苦しかったときの話をしようか」を読みましたので、感想をシェアしたいと思います。

私は本書で初めて森岡さんの考えに触れたのですが、「世の中の残酷な現実」「自身のブランド力を高めることはすなわちマーケティング」「ご自身が苦しかった時の思い」がギュッと詰まっている読み物になります。

本書は、これから社会人として巣立っていく娘さんに宛てた森岡さんのメッセージが込められていて、終盤にいくと目頭が熱くなる場面が何度もありました。私は本書を通して一気にファンになってしまいました!

本記事は、

  • マーケティング手法の初歩を学びたい方
  • いずれ巣立っていくお子様をお持ちの方
  • これから社会人になろうとする学生の方

に向けて有益な内容にしたいと思います。それではよろしくお願いします!

1.世の中は残酷だ

いきなりセンセーショナルな見出しですが、本書ではまず、「そもそも人間は平等ではない」「資本主義は無知であることに罰金を科す」「年収は職業により自動的に決まる」といった、残酷な世の中について言及します。

  • 人間はそもそも不平等
    格差の根源は「知力」。これは先天的なものであり、例えば東大生は似たような知力の相手と結婚するので、その子供も高い知力をもって生まれてくる可能性が高い。ゆえに格差は縮まらない。したがって人間は平等ではない。
  • 資本主義は無知への罰金制度
    現代社会を動かすルールである資本主義は、労働者を安く働かせて、資本家が大きな利益を得るシステムのこと。このことを無知のまま放置すると、労働者は搾取されるだけ。したがって資本主義は無知であることに対して罰金を科している。
  • 年収
    年収は職業を決めた瞬間に決まる。年収は、その人の職能と業界構造、成功度合いに依存するが、特に職能と業界の影響が大きい。例えば、運動神経抜群で、どんなスポーツでも一流を極められるという職能の人がいたとしたら、年収という意味ではプロサッカー選手よりもプロ野球選手の方が有利。なぜなら、プロ野球の方が、業界としてお金が回りやすい構造になっているから。

上記のことって、大人なら皆知っていますけど、それをこんな風に理路整然と述べられてしまうと、気が滅入りますよね(私も書いていてちょっと辛かったです(-_-;))。

でも本書は、娘さんに向けたメッセージですから、父親としては「残酷な現実」にしっかりと目を向けさせる必要があるわけです。そして本書には以下のような、希望に満ちたメッセージが込められているわけです。

この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!

2.マーケティング手法で自身のブランド力を高める

ビジネス戦略を立てる際に用いられるマーケティング手法として、「SWOT分析」というのがありますね。

・S=Strength、強み
・W=Weakness、弱み
・O=Oppotunity、機会
・T=Threat、脅威

典型的には、「競合他社や市場動向の変化」から機会をとらえ、「自社の強み」をぶつけて勝負する、ということを整理するのに用いられるフレームワークです。私の理解では、このような考え方を自身のブランド力強化に応用できる、というわけです。森岡さんはもっと分かりやすく、以下のような表現を用いています。

成功は必ず人の強みによって生み出されるのであって、決して弱みからは生まれない

この言葉に、前章で触れた「それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!」との繋がりが読み取れますね。

ではそうすると、

どうすれば「自分の強み」を知ることができるのか?

そしてその強みはどういう職業に向いているのか?

ということが疑問に湧いてきますよね。特に前者の疑問に対して、具体的かつ効果的な方法が述べられていることが、本書を抜きん出たものにしている要因の一つだと思います。

  1. 「自分の強み」は好きなことのなかにある
    まず、自分が好きなことを、動詞でたくさん挙げてみるのが良いそうです。例えば、戦略を「考える」とか、人と「話をする」とか、企画を「成功させる」とか。とにかくたくさん、自分の好きなことを集める。
  2. たくさん挙げた好きなことを、T(Thinking:考えること)、C(Communicating:人とやり取りすること)、L(Leadership:何かを達成すること)に分類します。分類した結果として、最も数が多いものが「自分の強み」というわけです。納得感がありますよね。
  3. 最も大事な「自分の強み」をつかむことができれば、それを活かすことのできる職能が決まってきます。本書では例えば、以下が例として挙げられていました。
    Tタイプ:ファイナンス、コンサル、研究職など
    Cタイプ:プロデューサー業、営業職、広報など
    Lタイプ:管理職、経営者、プロジェクトマネージャーなど

まとめると、以下のようになります。

好きなことを起点にすれば「自分の強み」を見つけることができるので、それを活かすことのできる職能も自ずと決まってくる

「自分の強み」を活かした職能を身につけ、それを職業とすることができればほぼ合格。次は、この残酷な世界の中で強靭に生き抜いていくためには、自身のブランド力を向上することが重要、と記されています。

要点は、自身のブランド力向上に向けて、「誰に」「何を」「どのように」訴求していくのかということで、まさにマーケティングそのものと言えます。

3.心の内

こんなに卓越したスキルを持っていて且つ実行力のある森岡さんですが、前職では劣等感にさいなまれていたり、部下から洗礼を受けていた経験をたくさん持っているとのことです。

この辺りのエピソード、生々しく書かれていて、是非本書を手に取って、森岡さんに憑依して読んで頂きたいです。本書の最終パートから私なりに読み取ったメッセージは以下3点です。

  1. 組織に成果を挙げさせるのが重要
    もしかすると、職場で嫌がらせや干されを経験することがあるかもしれない。そんなときは、仕事に集中して「組織に成果を挙げさせる」ことに注力すべし。そうすれば、周囲も次第に認めてくれようになるし、自己肯定感も上がる
  2. 不安な気持ちはなくさなくても良い
    大事なプレゼンの直前など、緊張や「不安」はつきもの。でもこれをなくす必要はない。なぜなら、「不安」は「挑戦」している証拠だから。「不安」と上手く付き合って、「挑戦」する気持ちを維持していくことが大事
  3. 自分の弱みは仲間に補ってもらう
    上述のとおり、成功は「人の強み」から生まれる。他方で、自分の弱みが無視できないケースもあり得る。この場合、強みを伸ばす時間を削ってまで弱みを克服するよりも、自分の弱みを補ってくれる仲間を見つけて、フォローしてもらう方が理にかなっている

4.まとめ

森岡毅さんの「苦しかったときの話をしようか」を紹介させていただきました。

父から娘へのメッセージとして、「世の中の残酷な現実」「自身のブランド力を高めることはすなわちマーケティング」「ご自身が苦しかった時の思い」が込められている良書です。本書から一貫して感じるのは、

この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!

という思いです。親、子ともに必読であると思いますので、参考になれば幸いです。

それでは最後まで読んで頂きありがとうございました!